「お店でコーヒーを焙煎しています」と自己紹介すると「あぁ、カフェやってるんですね」と言われることがあります。
焙煎コーヒー豆が買えて、コーヒーも飲めるものの、フードもスイーツもメニューにない店を何と呼ぶべきか、今でもちょっと迷いますが、自分たちとしては「コーヒー屋」だと思っています。
今回は、伝説のコーヒー屋のマスター二人の対談本をご紹介します。
珈琲屋
https://www.shinchosha.co.jp/book/351891/
かつて東京・表参道にあった「大坊(だいぼう)珈琲店」の大坊勝次マスターと、惜しくも69歳で亡くなられた福岡「珈琲美美(びみ)」の森光宗男マスター。同い年生まれ、ネルドリップでコーヒーを淹れる、珈琲屋という商売を突き詰めているという共通点があるものの、会話から窺えるお二人の性格や思想は対照的です。
対談はお互いの店に相手を招く形で行われます。何事につけご自身の考えを明確に言葉にされる森光さんに誘われて、大坊さんもご自分の考えを吶々と、しかしはっきりと語られます。必ずしも見解が一致する訳ではありませんが、それぞれが時間をかけて練り上げたスタイルに、お互い敬意を払っておられる感じが伝わってきます。
大学に入学したての頃、先輩に連れられて入った自家焙煎コーヒー店で生まれて初めてコーヒーを飲み(苦くてストレートでは飲めませんでした)、気がつけば通い詰めるようになっていました。その店もネルドリップでコーヒーを淹れていました。
時が経ち、美味しいと感じるコーヒーは変わりましたが、思えばその頃から漠然と「珈琲屋」という商売に憧れていた気がします。
コーヒーの指南書ではなく、大袈裟に言えば人生の歩み方について考えさせてくれるような本です。